『音樂美學』(Bishop Records, EXJP008)
2002年にリリースされた音樂美學名義のファーストアルバム。
神田晋一郎:ピアノ・作曲
則包桜:パーカッション
------------------------------
「音樂美學」は神田晋一郎(Pf.)を中心とするユニット。録音時点では則包桜(perc.)とのデュオ編成だった。音色と間合いに気を配って情念と手癖を極力排除した神田の演奏スタイルは、ヨーロッパ自由即興音楽に直接連なる。内部奏法やプリパレーションを大胆に取り入れても(第4曲<外科室>など、殆んど打楽器デュオだ)品位を保っている点や、フェルドマンの後期作品のように、調性的な要素を用いても抒情に流れない点は、AMMのティルパリーを思わせる(ただし、直接的影響は全くないという)。則包の打楽器演奏も、音色と空間性に配慮してパワープレイを避け、神田の美学に呼応している。フレーズを切り出し、相手の音形に反応することを恐れない「演奏性」と、リズムの絡み合いよりも残響の溶け合いに重点を置いた「音響性」を併せ持つ彼らのアンサンブルが、現時点ではほぼ接点のない日本のふたつの即興シーンの架け橋になることを期待したい。(野々村禎彦、「G-Modern」vol. 24)